妊婦さんになって母子手帳をもらいに行くと、一緒にいろいろなパンフレットをもらうことと思います。
検診の案内だったり、母親学級の案内だったり。

その中に最近は「リステリア菌食中毒に注意しましょう」というパンフレットが入っていることと思います。

突然「リステリア菌」などという聞きなれない名前を出されて不安になってしまう方もいるかもしれません。

そこで今日は、リステリア菌について少し詳しくご説明します。

リステリア菌というのは、食中毒の原因菌の一つです。
自然界に広く分布していて、食品加工施設や家庭内からも発見されることがある菌です。

感染しても症状が出ない場合が多いのですが、免疫力の落ちている人が感染すると、発熱、筋肉痛などを起こします。
食中毒菌ですが、胃腸炎症状を出さない場合もあるので、注意が必要です。

妊婦さんの場合、母体自身が重症化する場合と、胎盤や血液・羊水などを介して胎児に感染し、胎児が重症化する場合があります。
重症化すると、髄膜炎や敗血症をおこし、命にかかわる場合もあります。
治療は抗菌薬です。

潜伏期間は長めで、原因食品を口にしてから1週間以上経過してから発症する場合もあります。

ほかの菌と大きく違うのは、この菌が低い温度でも死なないだけでなく、ゆっくりと増えていく、という点です。
また、塩分にも強いため、塩漬けされたり、塩分濃度の強い食品の中でも感染力を失わないという特徴もあります。

このため、長期間冷蔵保存された食品から感染してしまうことがあり、冷蔵保存技術の発達した先進国での感染が問題となることが多いのです。

日本ではどうかというと、今のところ、大規模な感染は2001年の北海道でのチーズを原因とした感染のみで、あとは年に数十件程度の散発発生が疑われる程度です。

日本での発生は少ないのですが、食の欧米化に伴い、チーズや生ハムなど長期冷蔵・塩蔵保存された食品が食卓に上る機会が増えていますので、今後発生が増えることが懸念されています。
ですので、妊婦さんには、より注意をしていただきたいと、パンフレットが配られているのです。

冷蔵保存を過信せず、食べる前の加熱を十分に行い、安全においしい食事を召し上がってください。

栄養バランスにも気を付けてくださいね。