「リプロダクティブ ヘルス/ライツ」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか?

1994年に国連で提唱された言葉で、直訳すると「性と生殖に関する健康/権利」となります。
具体的には「健康」とは「安全で満足できる性生活がおくれる健康状態」「安全な出産ができる状態」を、「権利」とは「子供を産むかどうか、産むならば、いつ、何人くらいを産むかを決める権利」「生殖や性感染症に関する適切な情報とサービスの提供を受ける権利」などを示しています。

避妊というと何となく話題にしにくい、と感じる方もいらっしゃるかと思います。
でも、女性がパートナーとよりよい関係を築いていくために、もし現在が妊娠を望む時期でないのであれば、適切な避妊方法を二人でよく話し合うことはとても大切なことになります。

では「適切な避妊方法」とはいったいどんなものでしょう?

実はこれには正解はありません。
年齢、健康状態、通院の負担、将来の挙児希望など、様々な条件にもっとも合う方法がその方にとっての適切な避妊方法となります。

今日のブログでは、ご自身にとって最も適した避妊方法を選ぶための情報提供をしてみたいと思います。
ぜひ、パートナーとご一緒に読んで、話し合ってみてください。

コンドーム
最も普及している方法です。
性感染症の予防効果がある。手に入りやすい。
正しく使用しないと失敗率が高い。男性主導型のため、男性が使用方法をよく理解し協力的である必要がある。

ペッサリー
ドーム型の避妊具で、子宮の入り口にかぶせて精子の子宮内への侵入を阻止する方法です。ペッサリーは行為前に女性自身が挿入し、行為後8-24時間の間に取り出します。洗浄して繰り返し使用します。現在ではほとんど普及していません。
性行為前に挿入でき、性感に影響しないため、性生活の満足度が高い。女性の意志のみで使用できる。
性感染症を予防できない。医師にあらかじめ適応サイズを測定してもらう必要がある。使用方法が難しい。

殺精子剤
精子に障害を与える薬剤を膣内に挿入する方法です。以前は錠剤やフィルム剤が販売されておりましたが、現在、国内で販売されているのはゼリー剤のみです。単独では効果が弱いため、コンドームやペッサリーと併用して使用されます。
女性自身で行える。
単独では避妊効果が弱い。使用のタイミングが難しい。

オギノ式
排卵の時期を月経周期、基礎体温測定や子宮頸管粘液の観察などによって推定して、その時期の性行為をさける方法です。
器具、薬剤等が必要ない。
性行為の期間が限定される。失敗率が高い。

子宮内避妊器具(IUD)
子宮内に小さな器具を挿入して妊娠を防ぐ方法です。銅を付加したり、ホルモンを付加して避妊効果を高めた製品が開発されています。
効果が高く、ホルモンを付加したタイプのものでは月経困難症の治療効果もある。安全性が高く、全身的影響がない。一度挿入すれば2年から5年間効果が持続する。
医師による挿入、定期的な診察が必要。出産経験がないと挿入が難しい。

経口避妊薬(低用量ピル)
女性ホルモンの入った錠剤を服用することで、排卵を抑制して妊娠を防ぐ方法です。欧米で広く普及しています。
避妊効果が非常に高い。女性の意志のみで実行可能。
毎日忘れず服薬する必要がある。授乳時は使用できない。既往症や喫煙量などによって使用できないケースがある。

緊急避妊薬
無防備な性交が行われた後、妊娠を回避するために薬を服用する方法です。性交後72時間以内に服薬をします。
1回の服用(ノルレボの場合)で妊娠の危険を80%近く減らすことができる。
定期的なピルの服用などに比べ避妊効果が低い。高価である。

それぞれの避妊法による避妊効果は以下のようになります。
(妊娠率はそれぞれの避妊法を1年間続けたときの妊娠する割合です)

方法

理想的な使用(%)

一般的な使用(%)

避妊せず

85

85

コンドーム

2

15

ペッサリー

6

16

殺精子剤

18

29

オギノ式

19

25

子宮内避妊器具(ホルモン含有型)

0.10.6

0.10.8

低用量ピル

0.3

8


(緊急避妊薬は一時的なものなのでこの表には含まれません。)

いろいろな避妊方法をご紹介しましたが、現在日本で一般的に用いられているのはコンドーム、オギノ式、低用量ピル、子宮内避妊器具(IUD)です。
最後にそれぞれの方法にかかる費用を茅場町いとう医院の場合を例にご紹介いたします。

低用量ピル
1シート(1か月分) 約2500円
ほかに受診ごとに再診料1000円(初回のみ3000円)、年1~2回の血液検査(1回あたり4600円)、年1回の子宮がん検診(1回あたり3400円)、経膣超音波検査(1回あたり3500円)を行っています。
処方は初回は1か月分のみ、以降はご希望により3か月分まで処方可能です。

子宮内避妊器具
銅付加型(ノバT) 30490円
黄体ホルモン含有型(ミレーナ) 70490円
診察、超音波検査、抗菌薬処方等含む。
ほかに装着後1か月検診(4500円)と、年1回の定期検診(7900円)が必要です。

緊急避妊薬
ノルレボ 15000円
相談費用含む。(相談のみの場合には相談料として3000円がかかります。)

茅場町いとう医院HP
http://www.kayabacho-itoiin.jp/