承認申請から5年の歳月を経てようやく9価HPVワクチンが承認されました。

以前のブログ記事「子宮頸がんワクチンについて」もぜひお読みください。
私の娘にワクチンを打った時のことも記載してあります。
http://kayabacho-itoiin.blog.jp/archives/81616268.html


■HPVワクチンって?

子宮がんには主に40代以降に発症する子宮体がんと、20代から発症する子宮頸がんがあります。
子宮頸がんは一部の特殊な例を除き、ほぼヒトパピローマウイルス(HPV)が原因となって発症します。

HPVは性的接触により感染しますが決して特殊なウイルスではなく、性交渉の経験がある人の50-80%が感染するウイルスです。
HPVワクチンはこのウイルスへの感染を予防するワクチンとなります。

■9価ってどういうこと?

HPVには100を超える種類があります。
このうち子宮頸がんの原因となるとされるウイルスは15種類です。
今まで日本で承認されていたのはこのうちの2種類のウイルスに効く2価ワクチン(16,18型)と、尖圭コンジローマの原因となる2種類のウイルスにも効く4価ワクチン(6,11,16,18型)の2種類でした。

今回承認された9価のワクチンは子宮頸がんの原因となるウイルスのうちの7種類と尖圭コンジローマの原因となる2種類、合わせて9種類のHPVに効果のあるワクチンです。

子宮頸がんを起こすHPVのすべてに効くわけではないので、100%の予防効果はありませんが
2価、4価ワクチンで65%
9価ワクチンで90%以上
の子宮頸がんへの予防効果があるとされています。
9価ワクチン図


■いつから9価のワクチンを接種できるの?

承認されたワクチンは流通が安定すれば接種可能となります。
当院でも接種に向けて準備を進めております。(2020.7.21現在)
接種可能になればこのページに追記いたします。

また、公費負担についてですが、今回承認されたのでおそらく近いうちに9価のワクチンも定期接種の対象(=公費負担)となるのではないかと思います。
ただし、現時点ではその時期などは未定です。

なお、今までも海外からの並行輸入品として9価のワクチン(ガーダシル9など)を接種できる医療機関はありました。

■9価ワクチンは2回接種でもいいの?

今回承認された接種方法は、3回接種(0月、2月、6月)です。
WHOは15歳未満については2回接種(0月、6月)でもよいとしていますが、日本では承認されておりません。
なお、15歳以上についてはWHOでも3回接種を推奨しています。

■すでに1回または2回ワクチンを打っているんだけど

一度打ち始めたワクチンを途中で他の種類に変えることは避けるべきとされています。
途中で変えると、変更前のワクチンと変更後のワクチンのいずれの効果も十分に得られないからです。
ですので、以前に打ったワクチンと同じ種類のもので3回すべての接種をされることをお勧めします。

私の娘たちもすでに4価のワクチンで2回接種しています。
9価に変更した場合、さらに3回自費での接種となってしまいます。
このまま4価のワクチンで接種完了するか、自費で3回9価のワクチンを接種するか悩み中です。

■安全性は大丈夫なの?

一番心配になることだと思います。
9価のワクチンは海外ではすでに2014年12月にアメリカ、2015年にはカナダ、EU、オーストラリアで承認され、現在70か国以上で使用されています。
安全性については2価4価と同等(接種部位の疼痛はやや多いとの報告もあり)とされています。
今回の承認で、万が一の場合も国の救済制度も利用できるようになります。
もちろん、その制度を利用しなくて済むのが一番ですが、今まで自己責任で打つしかなかったワクチンを、国のバックアップの下で打つことができるのはとても大きな進歩だと私は思っています。