茅場町いとう医院ふろくのブログ

東京都中央区にある産婦人科・女性内科のクリニック

2014年01月

低用量ピルを安全にご使用いただくために

最近、低用量ピルの副作用による死亡例が相次いで報告されております。

低用量ピルは、避妊の目的のほかに、月経困難症や子宮内膜症などの治療のためにも使われている有用なお薬ですが、相次ぐ報道により「危険なお薬」という印象を抱いてしまった方も多いのではないかと思います。

本日は少し長くなりますが、低用量ピルについてQ&A形式でまとめてみようと思います。

低用量ピルの危険な副作用ってなに?

血栓症という、血管の中に血液の塊ができて血管を詰まらせる副作用があります。
血栓ができる場所によっては命にかかわる場合もあります。

どんなところに血栓ができるの?どんな症状が出るの?

頻度としては足の血管にできることが多いです。
足の血管に血栓ができると、足の痛みやむくみなどがおこります。
その血栓が血液に流されて肺で詰まると「肺血栓塞栓症」となり、息切れや胸の痛みが出て、命にかかわる場合があります。
ほかに、頭や眼、腸の周りの血管や心臓の血管に血栓ができることもあり、それぞれ、頭痛・マヒ症状、視力障害、激しい腹痛、胸痛などが出現します。

どのくらいの人に血栓症がおきるの?

海外の調査になりますが、年間10000人あたり3~9人と報告されています。
そのうち、命にかかわる状態になる方は100人に1人程度といわれています。(死亡率は10万人あたり1人以下)
なお、ピルを服用していない女性の場合は、10000人あたり1~5人に発症すると報告されています。
また、妊娠中や分娩後は血栓症が発症しやすくなり、それぞれ10000人あたり5~20人、40~65人に発症するという報告があります。

血栓症が起きやすい人はいるの?

40歳以上の方、喫煙者、肥満や極端な痩せ、家族に血栓症を起こした人のいる方などは注意が必要です。
また、脱水状態や長期間体、もしくは体の一部を動かせない状態になると、発症しやすくなります。
ただし、こういったリスクがなくても発症する方はいるので、注意は必要です。

不安だから安全性が確認されるまで、服用を中断しようと思うのですが?

血栓症の副作用については、ピルがホルモン剤である以上、ゼロにはなりません。
ゼロに近づけるための努力として、低用量の製剤ができたのですが、それでも血栓症を発症する方はいます。
中断については、1周期(4週間)あるいはそれ以上の休薬期間をおいて、再び服薬を開始すると、使用開始後数か月間は血栓症の発症するリスクが高まると報告がありますので、中断しないほうがいいといわれています。
どうしても不安な場合は、中断ではなく、中止、という選択になりますが、月経困難症などの場合、代わりとなる有効なお薬が少ないため、医師とよく相談していただき今後の治療方針を考えてからのほうがよいと思います。

月経困難症で服薬中です。ほかの治療法はないですか?

対症的に痛み止めで改善できるのであれば、そちらで治療します。
漢方薬が効果的な場合もあります。
子宮内膜症や過多月経を伴うなど、上記の治療のみで対応が難しい場合には、ホルモンの中でも血栓症に関与するとされるエストロゲンを含まない製剤によって生理を止める方法もあります。
現在はまだ保険適応ではありませんが、子宮内にホルモン含有の避妊リングを入れることで、全身への副作用を減らしつつ、症状をコントロールする方法(ミレーナ)もあります。
(ミレーナについては13.12.10の記事「避妊について」もご参照ください)

ピルを続ける場合、注意すべきことはありますか?

血栓症の兆候に注意し、下記のような疑われる症状が出た場合は服用をやめ、処方医に連絡してください。
症状の強い場合は救急医療機関を受診し、ピル服薬中であることを伝えてください。

 ◆ふくらはぎの痛み・むくみ・・・握ると痛い、赤くなっている
 
◆胸の痛み・・・押しつぶされるような痛み、痛みが続く、息苦しい
 ◆頭痛・・・激しい痛み、前兆のある痛み(チカチカする、半身の脱力やしびれがある、しゃべりにくい)

 
◆視覚障害・・・見えにくいところがある、視野が狭くなる
 ◆その他・・・めまい、舌のもつれ、失神、けいれん、意識障害、手足のしびれ、腹痛

ピルは急に中止しても大丈夫ですか?

中止すると避妊効果はなくなりますが、健康への影響はありません。
月経困難症についても、次の月経から急に悪化するといったことはありません。
血栓症の兆候など不安を感じることがあったら、服薬を中止し処方医に相談してください。
ただし、休薬の期間が4週間以上になると、再開した時に血栓症のリスクが高まるという報告がありますので、再開を考えられている方は早めに処方医までご相談ください。

茅場町いとう医院のピルに対する考え方を教えてください

ピルは女性の健康や、生活の質を向上させるうえで非常に有用なお薬だと考えています。
でも本来、命にかかわるような状態ではない若い女性が、副作用によって命を落とすような悲劇は限りなくゼロに近づけたいと考えています。
このため、避妊目的であっても、治療目的であっても、当院では定期的な診察と検査(血液検査、超音波検査、がん検診)を行ったうえでピルの処方を行っております。
時間面や費用面でご負担をかけることにはなりますが、ご理解をいただける方にのみピルの処方をさせていただいております。
ピルが適さない状態の方や、定期的な検査が難しい方には漢方やミレーナなどのほかの治療法もご提案しております。

茅場町いとう医院HP
http://www.kayabacho-itoiin.jp/

リステリア菌って知っていますか?-妊婦さん 豆知識ー

妊婦さんになって母子手帳をもらいに行くと、一緒にいろいろなパンフレットをもらうことと思います。
検診の案内だったり、母親学級の案内だったり。

その中に最近は「リステリア菌食中毒に注意しましょう」というパンフレットが入っていることと思います。

突然「リステリア菌」などという聞きなれない名前を出されて不安になってしまう方もいるかもしれません。

そこで今日は、リステリア菌について少し詳しくご説明します。

リステリア菌というのは、食中毒の原因菌の一つです。
自然界に広く分布していて、食品加工施設や家庭内からも発見されることがある菌です。

感染しても症状が出ない場合が多いのですが、免疫力の落ちている人が感染すると、発熱、筋肉痛などを起こします。
食中毒菌ですが、胃腸炎症状を出さない場合もあるので、注意が必要です。

妊婦さんの場合、母体自身が重症化する場合と、胎盤や血液・羊水などを介して胎児に感染し、胎児が重症化する場合があります。
重症化すると、髄膜炎や敗血症をおこし、命にかかわる場合もあります。
治療は抗菌薬です。

潜伏期間は長めで、原因食品を口にしてから1週間以上経過してから発症する場合もあります。

ほかの菌と大きく違うのは、この菌が低い温度でも死なないだけでなく、ゆっくりと増えていく、という点です。
また、塩分にも強いため、塩漬けされたり、塩分濃度の強い食品の中でも感染力を失わないという特徴もあります。

このため、長期間冷蔵保存された食品から感染してしまうことがあり、冷蔵保存技術の発達した先進国での感染が問題となることが多いのです。

日本ではどうかというと、今のところ、大規模な感染は2001年の北海道でのチーズを原因とした感染のみで、あとは年に数十件程度の散発発生が疑われる程度です。

日本での発生は少ないのですが、食の欧米化に伴い、チーズや生ハムなど長期冷蔵・塩蔵保存された食品が食卓に上る機会が増えていますので、今後発生が増えることが懸念されています。
ですので、妊婦さんには、より注意をしていただきたいと、パンフレットが配られているのです。

冷蔵保存を過信せず、食べる前の加熱を十分に行い、安全においしい食事を召し上がってください。

栄養バランスにも気を付けてくださいね。
ごあいさつ
日本橋茅場町にある産婦人科・女性内科のクリニックです。

HPに載せきれないいろいろな情報をブログにつづっていきたいと思います。